つねに時代を切り開き、長きにわたり
少女まんが界を牽引してきたくらもちふさこ。
音楽を絵で巧みに表現した
『いつもポケットにショパン』、
田舎の懐かしい日常を描いた
『天然コケッコー』、
作品が絶妙に絡み合う
『駅から5分』と『花に染む』など、
作品はいつも新鮮な驚きと魅力に溢れている。
連続テレビ小説『半分、青い。』で名作の数々が
カリスマまんが家・秋風羽織の作品として
劇中に登場したのも記憶に新しい。
つまずき、悩み、修正を重ね……
華やかな作品とは裏腹に、
あの頃は愚直に少女まんが道を進む毎日だった。
著者が、これまで40年を越える
キャリアの中で感じとった
創作・表現の秘密を初めて自身の言葉で、
能の伝書のように語りおろす。
ファン待望の自伝・秘伝の書、決定版!
『天然コケッコー』では、高校入学時に大沢を坊主にしています。王子ポジションから坊主です。坊主頭って、モノクロ原稿だとすごく難しいんです。点々を描いちゃうとお地蔵様みたいになっちゃうし、髪とおでこの境目に線をひいちゃうとカツラっぽくなっちゃうんで、どうやって描けばカッコよくなるものだろうかと、ものすごく悩みました。それでも坊主にしたのは、モデルにした学校が坊主だったのと、都会っ子でイケメンの大沢だからこそ、「一度は坊主になってもらわないと」と、思ったんです。 それは自分の気持ちへの挑戦ですね。坊主の大沢を自分がカッコイイと思えなくなったらペンが動かなくなるので、カッコいいと思い続けられる絵が描けるか。さらに、少女まんがだから髪を長くしてもいいっていうのも、なんとなく「逃げ?」と思っちゃったんです。現実にモデルにした学校では坊主なのに、少女まんがだから坊主じゃなくていいってことにすると「少女まんがが負けている」気がして。それなら坊主でも、カッコよくしてみせようと思ったのです。本当に苦労したので、物語の中で早々に校則を変えるんですけどね(笑)。
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1955年、東京都生まれ。1972年『メガネちゃんのひとりごと』でデビュー。以来、心温まる名作を多数発表し、幅広い読者層を魅了し続けている。代表作に『いつもポケットにショパン』『東京のカサノバ』『天然コケッコー』など。『花に染む』で第21回手塚治虫文化賞「マンガ大賞」を受賞。2019年現在「ココハナ」(集英社)にて妄想系スペシャル“絵”ッセイ『とことこクエスト』連載中。